タグから記事をさがす

発達障害 みんなのストーリー

適切な専門医を見つけて早期発見・
診断を受けることが、生きやすさへの近道。発達障害は
個性。得意なところに目を
向けて。

当事者インタビュー(ADHD[注意欠如優位]・ASD)
〜エンジェルさん(仮名・50代前半・男性)〜

プロフィール:

  • 年齢:50代前半
  • 職業:学校職員(一般採用枠)
  • 特性に気づいた時期:20代
  • 病院を受診した時期:40代後半
  • 診断された時期:40代後半
  • 診断名:注意欠如・多動症(ADHD)(注意欠如優位)
    自閉スペクトラム症(ASD)

主な特性:

  • 反復作業が得意
  • 記憶力が高い
  • コツコツと継続することが得意
  • 人とコミュニケーションをとるより、物を相手にする方が得意
  • データを集めて資料として整理したり、文章を要約したりするのが得意
  • 思ったことを素早く言語化して話す議論などが
    苦手
  • 曖昧あいまいな指示から相手の意図を読み取るのが苦手

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。

発達障害に気づく

結婚により生活環境が大きく変化した
40代後半での受診をきっかけに気づいた

40代後半のとき、結婚を機に生活環境が大きく変わった事、仕事で行き詰まった事が原因で、精神的に辛い時期がありました。仕事内容や人間関係の変化に慣れるまで時間がかかって戸惑ったり、「失敗したらもうダメだ」と思ってしまいごく普通の指導でもパニックになってしまったり、強いプレッシャーを感じて自分に自信を持てなかったり、さまざまな困りごとを抱えていました。これらが重なり、感情に乏しくなり、自分を否定し、人生を悲観する日々を送っていました。結果として、病院を受診したらうつ病だと診断され、同時に主治医から発達障害のテストを受けるように勧められました。このテストを受けたことで、ADHDとASDを併存していることがわかり、発達障害の診断に至りました。

発達障害を早期に発見できていたら、
失う人間関係も少なかったかもしれない

20代の頃から、話を聞きながら仕事でメモを取るといったような並行作業ができなかったり、嫌なことがフラッシュバックしたり、グループワークが苦手だったりと、ASDの傾向はあったと思います。その際、知能検査を受けに行ったり、聴き取りが苦手な点については耳の問題かと考え耳鼻科に行ったりして、原因を探ったのですが、特に問題は見つかりませんでした。病院の先生からも「大学まで出ているんだから大丈夫」「気のせいだ」と言われてしまい、自分の特性について気がつく機会がありませんでした。

悔やまれるのは
「早期に発見できなかったこと」

発達障害に気づく以前は、周囲の人となぜかみ合わないのか、その理由が分からずストレスが溜まる一方でした。もしこの頃に、自分に発達障害の特性があると気がついていれば、発達障害との付き合い方を早期に身に付けることができ、その後の人生が大きく変わっていたのではないかと思います。実際に今まで、発達障害の特性からくる言動で壊れてしまった人間関係があったり、できないのは自分の努力不足だと思ってしまい、どうすればいいのか長い間分からずに悩み続けていました。このような状態が、二次障害であるうつ症状へとつながってしまったこともあり、早期に正しい診断が受けられていたらと考えると、診断が遅れたことが本当に悔やまれます。

発達障害を受け入れる

診断を受けたときはショックだった

40代後半の時に発達障害、特にADHDだけでなくASDを併存していると診断されたときはショックでした。それは、世間では“自閉症”という言葉だけが独り歩きしており、暗いイメージがあったからだと思います。

当事者会で悩みを共有し、対処法を知った
「暗いことばかりじゃない」と徐々に受け入れられるようになった

それでも、自分が発達障害であることを少しずつ受け入れられるようになってきており、その大きな支えとなっているのは、当事者会で自分と同じ立場の方と情報交換できることです。職場ではなかなか相談しにくいこともあります。自分と同じ立場の人が集まり、悩みごとを共有する中で、私も自分のことを少しずつ話せるようになり、結果として生活の中での困りごとに対する知恵を得ることもできました。そして、発達障害について情報収集を進める中で、暗いことばかりではないと分かり、今では、発達障害と診断される前の私は「うつ症状が出るほど頑張りすぎていたのだ」と思っています。ありのままの自分でいいのだ、と分かったことで、肩ひじを張らずに自分を受け入れることで生きやすくなりました。

発達障害のある人は、特性のポジティブな側面を活かせば、社会に貢献できる
周囲の歩み寄りも助けになる

ADHD・ASDの特性を知ったことで、自分のポジティブな側面である、人より反復作業が得意である・記憶力が良い物事をコツコツと進められるといったことが、発達障害の特性からくるものだと認識できました。ネガティブなイメージでとらえられることが多い発達障害ですが、その中でも社会に対して誇れることを見つけることができ、嬉しく思っています。「誰かの役に立つことができる」と考えられるようになったことで、失敗したときに凹んでも以前より立ち直れるようにもなりました。

より多くの人に、「発達障害のある人は、その特性を活かせば、社会に貢献できる」ことを知ってもらいたいです。排除しようとするのではなく、特性を活かせる環境を共に見つけるような歩み寄り方をしてもらえれば、私たちも社会に利益をもたらす存在になれると思っています。

得意・不得意は誰にでもあり、“脳のタイプ”が違うだけで“優劣”や“上下”ではないと思います。不器用でも真剣に取り組んでいるとに気づいてくれる人もいます。発達障害を、障害ではなく、個性だととらえてもらえるような社会になってほしいです。

発達障害と共に歩む

自分の特性に合った生活環境を整えるために、自分の特性をよく理解し、
働き方や
日常生活にも工夫を

自分の特性上、ストレスがかかるとネガティブな側面が出てしまうので、周囲に苦手なことや困っていることを勇気をもって伝えたり、疲れたときは遠慮なく休んだり仕事とプライベートを意識的に分けたりしています。たくさんの音が聞こえる環境も苦手であるため、電車などに乗るときはノイズキャンセリング機能のあるデジタル耳栓やヘッドフォンをして音をしぼる工夫をしています。

対処法に関する情報収集も大切

また、インターネットや図書館で、ASDの特性と対処法に関する情報を集めるようにしています。
私は診断された時期が遅かったため、自分の特性への理解が遅れ、他人とのコミュニケーションがうまくいかなかったり、そのせいで人間不信になったりと、つらい思いをたくさんしてきました。ですから、私と同じ立場にある人には、少しでも早く自分の特性に気づき、自分に合う環境の作り方・対処法を見つけ、無理に頑張るよりも「今の自分でいい」と思えるようになってほしいです。

日々の悩みを専門家に対面またはメールで相談 
自分の特性を受け入れながら生活できるように

自分の状態について相談できる場を持つことは大事だと思っています。現在、私は発達障害の専門医がいる病院へ、月1回通院をしており、発達障害の症状や障害者手帳取得などについて相談しています。病院では専門的な意見をもらえることに重要性を感じる一方で、医師と話せる時間には限りがあるため、十分な相談時間を確保するために、発達障害者支援センターや、医師の許可を得たカウンセリングも活用しています。

発達障害者支援センターへは、メールで相談を行っています。いつも同じ担当チームの方が対応してくれますし、2~3日で返信してもらえるので、継続性もあり安心です。障害者手帳を持っていなくても受けられる支援であるため、気軽に相談したい人におすすめです。また、私は特性上、話すより書いて伝えることが得意なので、自分のペースで行うことができるメール相談は、特に有用だと感じています。

カウンセリングは、月1回、45分間で、オンラインで受けています。1回6000円(自由診療)の費用がかかるので、頻繁に利用することは難しいですが、病院に比べて相談時間が長く、自分のペースで話すことができる点が魅力です。
このように、私は相談の場を意識的に持つようにしています。生活の中で生じる悩みを自分の中にとどめておくだけでは、鬱々つうとしてしまうため、人に話せる場を活用することで、自分の特性と向き合う努力をしています。

特性について、勇気を出して職場に伝えたことで
周囲の理解を得られ、自分も周囲も働きやすい状況に

私は当初、職場には発達障害があることを伝えていませんでした。伝えていなくても、自分の特性に向き合い、特性に合わせて職場や仕事のスタイルを選ぶことで働くことができていたと思います。ただ、周囲との折り合いをつけるのが難しい場面もあったため、しばらくしてから、勇気を出して職場にも自分の発達特性について説明することにしました。これにより、周囲とコミュニケーションの工夫を共有することができ、おお互いにフラストレーションが溜まりにくくなりました。周囲は私の話を受け止めてくれたようで、上司はプラス面もしっかり評価してくれています。

障害者手帳については医師と相談し、今のところ私にとって取得することに大きなメリットがないので、取得する予定はありません。

さらに、急に特性があらわれてしまうときが不安なので、自分の特性について記載したカードを自作し、持ち歩くようにしています。まだ使用したことはありませんが、万が一特性が出てきてしまったときはこのカードを人に見せ、自分の特性を丁寧に伝えることで、必要な配慮を受けられるように準備をしています。

この記事を読んだ方は
こちらの記事も見ています