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発達障害 みんなのストーリー

「やっぱりそうか」診断でわ
かった
生きづらさの理由
多様な支援・サービスで安定した就労、
さらには新しい友人関係も

当事者インタビュー(ASD)
〜ゴマフアザラシさん(仮名・37歳・男性)〜

プロフィール:

  • 年齢:37歳
  • 職業:官公庁職員(障害者採用枠)
  • 特性に気づいた時期:23歳
  • 病院を受診した時期:37歳
  • 診断された時期:37歳
  • 診断名:自閉スペクトラム症(ASD)

主な特性:

  • 興味を持ったことについて、とことん集中して調べる
  • 物事を整理し並べるのが得意
  • 作業中に横やりが入ると混乱してしまう
  • 日々の生活のルーティンを守りたい
  • 自分の力ではどうにもできない急な環境の変化に対応するのが苦手
  • 自分の感情や考えを相手にうまく伝えるのが苦手

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。

発達障害に気づく

上京による環境の大きな変化で、
うつ状態に

22歳頃、上京して環境が変わったことをきっかけにうつ状態になり、病院でうつ病と社会不安症との診断を受けました。それ以来、同じ主治医の元に通いつつ、27歳頃から障害者雇用枠で働き始め、地域の就労支援センターでは精神保健福祉士と相談しながら職場定着支援などを受けていました。

家族の指摘や身近な精神保健福祉士の勧めをきっかけに、発達障害の検査を受け、
診断に至った

37歳のとき、担当の精神保健福祉士から発達障害の検査を受けてみないかと勧められ、受けてみることにしました。その方が紹介してくれた、発達障害を専門的に診察できる病院にて検査を受けた結果、ASDと診断されました。

検査を受けようと思ったのは、かねてより自分はASDではないか?と感じていたことに加え、家族にASD傾向を指摘されたこともあったためです。妻も一時期うつ病に悩んでいた経験があり、その時の知識を活かして指摘してくれたことが、気づきにつながりました

検査の際には、小学校の成績表や母子手帳を持参するよう、病院から依頼がありました。成績表は見当たらなかったので、代わりに病院から母に電話で聞き取りを行ってもらいました。

発達障害を受け入れる

診断を受けたことで、長らく感じてい

”生きづらさ”の理由が分かった
「やっぱりそうか」と納得

以前から自分でもASDなのではないか?と思っていたため、「やっぱりそうか」と非常に納得し、診断結果はすんなり受け入れることができました。理由が分わかってよかった、という気持ちが一番大きかったです。

インターネットでASDの特性を調べ、自分にあてはまる項目が多いことを事前に自覚していました。また、過去を振り返っても、同級生とうまくコミュニケーションが取れなかったり、自分の感情や考えを相手にうまく伝えられず感情的になってしまったりしたことがあり、「あれは発達障害の影響だったのかな」と思うことがあります。

診断を受けるメリットは、
対処法を知る機会を獲得できること

診断を受けたことで、特性への対処法を提案してもらえたので、診断を受けてよかったなと思います。情報収集に活用している当事者団体への参加も、病院に紹介してもらいました。

病院では、薬やリハビリのことも詳しく教えてもらえて、助かっています。初めて病院に行くときは勇気がいるかもしれませんが、数か月待ちになったとしても、根気強く待って、しっかり受診するメリットは大きいと感じます。

発達障害とともに歩む

自分の特性を理解するとともに、
悩みはひとりで抱え込まず相談
周囲の理解と支援を受けられる環境は重要

ASDの特性として“定型的な行動を好む”というものがあり、私も朝に家を出る時間や、電車に乗る際の時刻・号車・ドアの位置は、いつも同じと決めています。こういったルーティンを守れないと、つらい気持ちになってしまいます。コロナ禍ではこのルーティンを守れなくなり、異動という仕事環境の変化も重なった結果、体調を崩してしまいました。

私が悩みを抱えていると、妻が気づいてくれて、自覚する前に指摘して、外部への相談をうながしてくれます。自分をよく理解することに加え、周囲からの理解と支援を得ることは本当に必要だと感じます。

特性のことは病院で医師に相談しますが、仕事のことは就労支援センターに相談します。当事者団体で同じ悩みを持つ方やその家族と交流することも、情報収集に役立っています。

病院での相談は月に1回、
妻の理解にも
支えられている

通院は、妻にも同行してもらっています。月1回なので負担は少ないです。うつ症状が重いときは月に2回通院することもあります。

診察では、ここ1か月の調子について、妻にも補足してもらいながら話します。診察時間は、順調なときは15分程度、症状が重いときは20分くらいです。医師に十分相談できているので、カウンセリングは今のところ利用していません。

職場の勧めで社会福祉協議会に相談して
以来、手厚い支援を継続して受けることが
可能に

相談先として一番優れていると感じるのは、地域の社会福祉協議会と就労支援センターです。転職の際の採用面接にも同行してくれて、採用後もサポートしてくれており、そのおかげで働けていると感じます。

就労支援センターに行きはじめたのは、職場からの勧めがきっかけでした。昔の職場でビルの移転と業務内容の変更という変化があったとき、うつ症状が強くなってしまったことがありました。その際、障害者雇用を担当していた人事部長が、就労支援を行ってくれる社会福祉協議会を紹介してくれました。

まずは妻に社会福祉協議会に電話をかけてもらったところ、就労支援センターの職員の方がその当時の職場に定着支援のために訪問してくれました。それ以来、現在の職場に転職した後も、数か月に1回は職場に訪問してくれて、私の上司を交えた三者面談を開いてくれています。面談に来てくれる担当者は変わることもありますが、センター内で同じチームに所属している担当者間でしっかり引継ぎも行われており、安心できます。無料で利用できる点も嬉しいポイントです。

当事者団体の活動に参加し、ほかの当事者やそのご家族と情報交換 
新たな友人関係や生活リズムも生まれ、プラスの効果を
得られている

自分の気持ちを外に発信することを心がけており、その方法のひとつが、当事者団体への参加です。当事者団体では月に1回、茶話会があり、自分の障害を周囲に伝えると共に、これに対して他の当事者やそのご家族からアドバイスをいただくことができます。

他の人の経験を聞くことも、とても有益です。例えば、他の当事者の話を踏まえ、訪問看護のサービスを受けようかと考えています。家族でうまくやっていくために、今後は妻にも参加してもらう予定です。

小中学校の頃は特定の人と付き合うのみで、高校以降は友人関係を築くことはあまりなく、大人になってからも行動範囲は家庭と職場のみでした。その後、当事者団体に行くようになって、友人関係を作る場ができました。外出先が増えたことで、新たな生活リズムを持てるようになった点もよかったと感じます。

本から情報収集もしています。コミュニケーションに関する本を買って学んだり、うつ病に関する漫画を読んで知識を得たりしています。

発達障害に理解のある職場に就職し、
気兼ねなく働くことが可能に

官公庁の求人は、全省庁合同の障害者雇用の説明会に参加した際に知り、元々関心を持っていたこともあって応募しました。

職場には診断結果を伝えており、上司や会社にいる精神保健福祉士にも定期的に相談・共有を行っています。身体障害や精神障害を抱えている方も一緒に働いており、かなりオープンな職場で、特に障害を隠す必要はありません。

医師の勧めで障害者手帳を取得
公的に認められた安心感と、さまざまな
サービス※を得られるように

主治医の元に通い始めて2年くらい経ったときに、主治医の「(障害者手帳を)取っておくと何かと生きやすいのでは」との勧めで取得しました。手帳を取得したことで、自分の障害を公的に認めてもらえたと感じ、安心できました。また、公的サービスを得られるのはアドバンテージであるとも感じます。

手帳を取得したことで、障害者雇用制度のことも知り、活用できるようになりました。以前は、仕事が長続きせずひとつの職場で安定しにくかったので、障害者雇用で安定して働けているのはとてもありがたいです。

※発達障害者支援センターへの相談は、精神障害者保健福祉手帳の有無に関わらず、行うことができます。自立支援医療による医療費の助成、障害者総合支援法による障害福祉サービス(例えば、介護給付・訓練等給付)なども同様ですが、別途申請等が必要です。民間企業が提供する一部サービスにも、手帳の有無に関わらず受けられるものがあります。

生きづらさを抱えている方へのメッセージ:
サービスをアドバンテージとして活かして、前向きに進もう

障害だからとネガティブに思わず、前向きに受け入れられるよう願っています。優待を受けられることも多いので、ポジティブにとらえて支援やサービスを活用してみてはいかがでしょうか。

周囲にオープンにするかどうかは人それぞれですが、使えるサービスがこんなにも多いということ、特性を持ちながらうまく周囲と付き合える環境があるということは、ぜひ知ってほしいです。

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