障害者手帳とは
手帳の種類や等級の違い、申請方法など
障害を持つ人が取得できる「障害者手帳」には、複数の種類があるのをご存じですか?
手帳の種類や申請方法、受けられる福祉支援サービスなどについて詳しくご紹介します。
更新日:2024年2月28日
障害者手帳とは、障害を持つ人が取得可能な手帳の総称
障害者手帳とは、障害を持つ人が取得できる手帳の総称で、「身体障害者手帳」 「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3種類があります。手帳を取得している人は、それぞれの障害の程度(等級)に応じてさまざまな福祉支援サービスを受けることができます。
ここでは、3種類の手帳について概要をご紹介します。
表1:障害者手帳 3種類の違い
身体障害者手帳 | 精神障害者保健福祉手帳 | 療育手帳 | |
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根拠となる法律・ 制度交付する 団体 |
身体障害者福祉法 | 精神保健及び器質性精神障害に関する法律 | 療育手帳制度について |
交付主体 |
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対象とする 障害分類 |
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知的障害 |
等級 | 1~7級 | 1~3級 | A~C など ※自治体によって区分の差があり |
更新 | 原則、定期更新はなし ※症状によっては再判定・更新あり |
更新あり 有効期限:2年 |
年齢に応じて再判定・更新あり ※自治体によって差があり |
厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html)を加工して作成
- 身体障害者手帳
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身体障害者福祉法に基づき、身体機能に一定以上の障害があると認められた場合に発行される手帳です。
対象となる障害は以下のとおりです。- 視覚障害
- 聴覚又は平衡機能の障害
- 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
- 肢体不自由
- 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
- ぼうこう又は直腸の機能の障害
- 小腸の機能の障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害
- 肝臓の機能の障害
等級は、障害が重い順から1~7級まで設定されていますが、7級ではひとつの障害のみでは手帳交付の対象にはなりません。
- 精神障害者保健福祉手帳
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精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に基づき、精神保健指定医や精神障害の診断・治療を行う医師により精神疾患・精神障害があると判断された際に交付される手帳です。
全ての精神障害が対象となり、以下のようなものがあります。- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
- 発達障害
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
知的障害があり、上記の精神疾患・精神障害がない人は、精神障害者保健福祉手帳ではなく療育手帳の対象です。なお、発達障害と知的障害がある人は、両方の手帳を取得することができます。
等級は、障害が重い順から1~3級まで設定されています。
- 療育手帳
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療育手帳制度に基づき、児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された人に交付される手帳です。法律に基づくものではなく、都道府県や政令指定都市が独自に運用・発行し、手帳の名称も各地域によって異なることがあります(たとえば東京都では「愛の手帳」と呼びます)。
等級も各都道府県・政令指定都市によって設定区分が異なります。
幼少期に取得されることが多いものの、成人してから取得することもできます。
障害者手帳を取得することで受けられるサービス
障害者手帳を取得すると、等級などに応じてさまざまな支援やサービスを受けることができます。ここでは主なものとして、税金の控除や公共料金の割引、教育や就職での支援・サービス、医療サービスの3点について具体的な内容をご紹介します。
- 税金の控除や公共料金の割引
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障害者手帳を取得すると以下のような支援・サービスを受けることができますが、手帳の種類や等級などによって受けられる程度・対象地域・申請方法などが異なります。
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- 税金の控除・軽減
- 所得税や相続税が控除される、給付金が非課税となる、贈与税が一定金額まで非課税となるなどの特例を受けることができます。
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- 公共料金の割引
- 鉄道・バスなどの公共交通機関における運賃や、光熱費、NHK受信料、携帯電話料金、美術館や動物園などといった公共施設または民間施設の入園料など、割引制度を取り入れている団体・企業が多くあります。
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- 教育や就職での支援・サービス
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障害者手帳を取得している人は、教育や就職において以下のような支援・サービスを受けることができます。
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- 保育・教育面での支援
- 保護者もしくは子どもが障害者手帳を取得している場合、保育・教育に関する支援として、特別支援学校への入学が可能(任意)、保育園入園の優先度が高くなる、放課後等デイサービスを利用できる、学内での合理的配慮を受けられる、などがあります。
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- 障害者雇用枠での就職
- 障害者雇用とは、障害のある人も雇用機会を得られるようにするため、自治体や企業などが障害のある人を雇用する制度または、障害者求人枠での就労のことです。一般雇用と比べて、合理的配慮を求めやすくなります。
合理的配慮の一例
- 本人の負担の程度に応じて業務内容などを調整する
- 感覚過敏の緩和のためサングラスや耳栓の着用を認める
障害者雇用枠での就職は、障害があることを伝えた上で採用されるため、周囲から理解を得やすいというメリットがあります。
また、就労移行支援事業所、地域障害者職業センターなどによる就労支援サービスでは、給付金受給や教育訓練・職業訓練を受けることができます。
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- 医療サービス
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障害者手帳を取得している人は、障害の等級や年収などに応じて、医療に関する以下のような支援・サービスを受けることができます。
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- 医療費の助成制度
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障害の等級や年齢、居住地域などにより内容は異なりますが、各自治体が医療費助成制度を整備しています。たとえば東京都では、心身障害者医療費助成制度(通称「マル障」)という制度を設け、保健医療の自己負担額が1割に軽減されます。
その他にも自立支援医療(更生医療)や難病医療費助成などもあります。
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- その他の医療サービス
- 障害によっては補助具を購入したり、家屋をバリアフリーにリフォームしたりする必要性も想定されるため、補助具への助成や、リフォーム費の支援などを受けられる場合もあります。
その他にも、年金や給付金などといった福祉支援もあり、気になる方はお住まいの地域の相談窓口を探してみてはいかがでしょうか。
障害者手帳を取得する際の
注意点は?-
- 有効期限がある手帳は、更新に注意
- 障害者手帳の中には有効期限が設定されているものもありますので、更新タイミングに注意が必要です。詳細は後述しています。
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- 就労する際の雇用形態においては、一般雇用と比較して、障害者雇用枠では収入が低くなる可能性もある
- 環境調整や合理的配慮といったサポートを受けやすいですが、一般雇用と比較して収入が低い傾向があります。ご自身の望む働き方やメリット・デメリットを考え、取得するか・しないか、あるいは就労形態について判断しましょう。
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- 心理的ハードル
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障害者手帳を取得していると経済的・福祉的にさまざまなサービスを受けることができる一方、心理的ハードルから取得をためらう人もいるかもしれません。
障害者手帳の取得は任意です。それぞれの価値観からメリット・デメリットを考え、取得する・しないについて判断しましょう。
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障害者手帳3種類の等級と申請方法
前述のとおり、手帳の種類によって申請方法や等級、対象となる人は異なりますが、いずれの場合でも申請書と医師の診断書が必要です。ここでは、等級や申請方法、更新頻度についてご紹介します。
身体障害者手帳
- 等級:
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1~7級まで設定されており、詳細は厚生労働省のホームページから確認することができます。障害によっては全ての等級がない場合もあります。
身体障害者手帳の等級
障害種別 等級 視覚障害 1 ~ 6級 聴覚または平衡機能の障害 2 ~ 6級 音声機能・言語機能・そしゃく機能障害 3、4級 肢体不自由 1 ~ 7級 乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害 1 ~ 7級 内臓の機能障害
ヒト免疫不全ウイルスによる免疫1 ~ 4級 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/shougaishatechou/dl/toukyu.pdf)を加工して作成
- 申請方法:
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- 各自治体の窓口で、申請書を取得、手続きの流れを聞く
- 指定医に診断書を記入してもらう(精神障害による障害年金を受給している人は障害年金証書の写しを代用することができる)
- 申請書、診断書、顔写真など必要書類を揃え、各自治体の窓口へ提出する
- 各自治体で判定され、交付される
- 更新:
- 原則として更新はありませんが、障害の程度が軽減される可能性がある場合などでは有効期限が設定されていることもあり、再認定を受ける必要があります。自治体からの連絡に注意しましょう。
精神障害者保健福祉手帳
- 等級:
- 1~3級まで設定されており、詳細は厚生労働省のホームページから確認することができます。
精神障害者保健福祉手帳の等級
等級 障害の程度 1級 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの 2級 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの 3級 精神障害であって、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/shougaishatechou/dl/toukyu.pdf)を加工して作成
- 申請方法:
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- 各自治体の窓口で、申請書を取得、手続きの流れを聞く
- 指定医に診断書を記入してもらう(精神障害による障害年金を受給している人は障害年金証書の写しを代用することができる)
- 申請書、診断書、顔写真など必要書類を揃え、各自治体の窓口へ提出する
- 各自治体で判定され、交付される
- 更新:
- 有効期限が交付日から2年に設定されており、更新する場合は、2年ごとに各自治体の指定する書類を揃え、再認定を受ける必要があります。
療育手帳
- 等級:
- 等級区分は各自治体により異なります。詳細は各自治体のWebサイトから確認できます。
療育手帳の等級区分 一例
地区(療育手帳の呼称) | 最重度 | 重度 | 中度 | 軽度 |
---|---|---|---|---|
東京都(愛の手帳) | 1度 | 2度 | 3度 | 4度 |
千葉県 | A | A1・A2 | B1 | B2 |
埼玉県(みどりの手帳) | マルA | A | B | C |
大阪府 | - | A | B1 | B2 |
名古屋市(愛護手帳) | 1 | 2 | 3 | 4 |
- 申請方法:
- 児童(18歳未満)か成人(18歳以上)かによって申請方法が異なります。また、各自治体により判定基準・方法などが異なるため、申請しても交付されない場合もあります。
- 児童であれば児童相談所、成人であれば市町村役場の障害福祉窓口に手続き方法を確認する
- 必要に応じて指定医から診断書をもらう(自治体により異なります)
- 療育手帳交付申請書、診断書、顔写真、印鑑など必要書類を揃え、各自治体の障害福祉窓口・児童相談所へ提出する
- 各自治体指定の心理判定員や小児科医が面接を実施し、判定結果に基づき認定された場合、交付される
- 更新:
- 自治体により更新要否・頻度は異なりますが、成長により障害が軽減する可能性もあることから2~5年ごとの再判定を設定している自治体が多くあります。
発達障害のある方が取得できる障害者手帳
発達障害では、障害の程度に応じて精神障害者保健福祉手帳の取得が可能であり、知的障害を伴う場合は療育手帳も取得できます。
精神障害者保健福祉手帳の要綱において、発達障害に関する障害の程度・等級について記載されており、それぞれの状況に応じた等級が設定されます。条件として、医師の診断から6ヵ月以上経過し、生活に制限が出ている、などがあります。
精神障害者保健福祉手帳における発達障害に関する等級
等級 | 障害の程度 |
---|---|
1級 | 発達障害によるものにあっては、その主症状とその他の精神神経症状が高度のもの |
2級 | 発達障害によるものにあっては、その主症状が高度であり、その他の精神神経症状があるもの |
3級 | 発達障害によるものにあっては、その主症状とその他の精神神経症状があるもの |
厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/shougaishatechou/dl/toukyu.pdf)を加工して作成
このように、障害者手帳を取得することで日々の困りごとへのさまざまな支援・サービスを受けることができます。また、障害者手帳を持っていなくても(医師による診断が付いていなくても)、発達障害について相談できる窓口もあります。ご自身の状況や困りごと・悩みに合った解決法を探してみてはいかがでしょうか。
- 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/shougaishatechou/dl/gaiyou.pdf)
- NCNPホームページ(https://kokoro.ncnp.go.jp/support_certificate.php)
- 国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_2.html)
- 東京都福祉局ホームページ(https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/josei/marusyo.html)
監修:昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授) 太田晴久先生
本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。