診断までの流れ
発達障害外見からはわからない発達障害を
診断するために
発達障害の特性や困りごとは人によって異なり、外見で判断する
ことはできません。
そのため、医療機関(病院・クリニック)での診察・診断は、
それぞれの特性・困りごとを丁寧に聞き取ることから行われます。
セルフチェック、相談、診断のちがい
発達障害の診断は、精神科や心療内科など、発達障害を専門とする医師に判断してもらうことが必要です。たとえば、支援センターなどの相談窓口では「相談」はできても、「診断」してもらうことはできません。
またセルフチェックは自身を理解するための便利なツールですが、あくまで“参考情報”や“目安”だと考えてください。セルフチェックで「発達障害の特性があると考えられる」という結果が出ても、「発達障害と診断される」という意味ではありませんので注意しましょう。セルフチェックの結果をもとに「自分には発達障害がある」などと自己判断して、職場に伝えることも避けましょう。
正確な診断のためには、医療機関を受診し、専門医に判断してもらうことが大切です。
診断までの流れ
まずは、医師が問診を行い、今困っていることや子どものころからこれまでの生活などについて本人や家族からさまざまな情報を聞き取ります。その中で、発達障害の特性の種類や程度、日常生活や仕事などへの影響について確認していきます。セルフチェックの結果も役に立ちます。ときには心理検査※を
行うこともあります。
※心理検査には、発達検査、知能検査、人格検査などがあります。
発達障害の特性があっても、周囲のサポートや配慮によって、問題なく過ごせていることもあるため、自分がどの程度、自分の特性を理解しているか、また周囲がどのようなサポートをしてくれているかといったことも、診断のために欠かせない情報です。
これらの話を問診の場で思い出せなかったり、うまく伝えられなかったりすることもあるかもしれません。あらかじめ困りごとやこれまでの経過をメモしたもの、母子手帳や小学校の通知表を持っていくと診断に役立ちます。
さらに、認知機能検査や画像検査、脳波の測定、IQの測定などが行われることもあります。
これらの情報を診断ガイドラインの基準に沿って検討し、発達障害と診断されるかどうか、総合的に
判断されます。
発達障害のグレーゾーンと診断
発達障害の特性はとても多様であり、その診断には「明確な線引き」をつけにくいところがあります。
また、発達障害の特性が一部認められるものの、
発達障害であると診断される程ではないという、
いわゆる“グレーゾーン”が大きいのが特徴です。
たとえば、忘れ物が多かったり落ち着きがなかったりするけれど、ADHDとは診断されない人や、こだわりが強いけれど対人コミュニケーションは得意でありASDとは診断されない人など、発達障害の特性があっても確定的な診断には至らないこともあります。
さらに、発達障害の特性を複数あわせ持つ人も多く、複数の特性について診断がつくこともあります。
専門医からの
ワンポイントメッセージ
診断は将来の選択肢を増やすための方法のひとつ、気軽に受診しても大丈夫
発達障害の診断は、レッテル貼りをするためのものではありません。たとえ診断されても、それは一生つきまとうような絶対的なものではなく、そこでどうするのかは本人やご家族で考えていくことができます。また、診断を受けることが出発点となり、困りごとへの改善策を見つけ、将来の選択肢を増やすことにもつながると思います。
そもそも発達障害という診断名は、自分自身の特性を深く理解したり、幸せになるために必要なサポートを得るための手段として存在しています。仕事や生活の中で生きづらさを感じていて「もしかしたら発達障害かもしれない」と心配になった時には、ひとりで悩むことなく、まずは医療機関を受診してみることをお勧めします。
本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。
監修太田 晴久先生
昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授)
2002年 昭和大学医学部卒業後、昭和大学附属病院、昭和大学附属烏山病院 成人発達障害専門外来などで勤務。2012年 自閉症専門施設のUC Davis MIND Instituteに留学し、脳画像研究に従事。2014年から昭和大学附属烏山病院、発達障害医療研究所にて勤務し、現在は昭和大学発達障害医療研究所 所長(准教授)。
【専門医・認定医】
精神保健指定医、日本精神神経学会 指導医・専門医、成人発達障害支援学会 評議員、日本成人期発達障害臨床医学会 評議員