のある人に向いている仕事
発達障害(ADHD・ASD)
苦手な仕事を抱えて対応できず困ったり、ミスをしてしまったりしていませんか?能力を発揮し自分らしく働くためには、自身の強み・弱みを知っておくと役に立ちます。
ここでは、ADHD・ASDの特性と仕事における強み・弱み、職業の一例について紹介します。それぞれの特性や苦手なことへの向き合い方を知って、自分に合う仕事を見つける第一歩を踏み出してみませんか。
仕事におけるADHD・ASDの特性と強み・弱み
発達障害のひとつである注意欠如・多動症(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)には、以下のような特性があります。
- ADHD:注意し続けることが難しい(不注意)、落ち着きがない・活動的(多動性・衝動性)、など
- ASD:特定のことに強いこだわりを持つ、人とのコミュニケーションが苦手、感覚が過敏・鈍麻である、など
ADHD・ASDともに、生まれつき持つ脳の性質や働き方から行動に違いが生じます。そこには仕事や日常生活での困りごともある一方で、個性や得意なことももちろん存在します。
発達障害の有無にかかわらず、自身の強み・弱みから仕事の“向き・不向き”を考えることは、自分に合った仕事内容や職場環境を調整する・選ぶ上での第一歩となります。
まずは、仕事におけるADHD・ASDの一般的な強み・弱みをみていきましょう。
ADHDの強み・弱み 一例
- 強み
-
- さまざまな考えが浮かびやすく、アイデアを豊富に出すことができる
- 興味のある分野には高い集中力を発揮できる
- 人とのコミュニケーションが得意である
- 行動力、決断力がある
- 大胆な行動・発言が人を惹きつける
- 弱み
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- 遅刻したり、大事な予定を忘れてしまったり、重要な書類をどこかに置き忘れたりすることなどがある
- 注意力散漫、集中力が持続しない、落ち着きがないためにケアレスミスが多い
- 興味のない分野には集中して取り組めない、関心を持てない
- マルチタスクが苦手で、複数の作業を同時並行で行うことができない
- 計画を立てることやじっくり考えることが苦手で、優先順位を立てられず見立てが甘い傾向がある
- 思いついたことを素直に発言してしまい、周囲を戸惑わせてしまう
ASDの強み・弱み 一例
- 強み
-
- 興味のある分野には高い集中力を発揮できる
- 確立されたルールがありそれに同意する場合、常に同じ水準の成果物を完成させることができる
- 論理的な思考が得意
- 妥協せず取り組むため、几帳面で正確な作業に向いている
- 弱み
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- チームでの作業など、コミュニケーションが重要な業務が苦手
- 感情を汲みとるのが苦手で、相手を怒らせるような発言をしてしまう
- こだわりが強く自分なりのルールを重んじたり完璧さを求めたりするため、作業手順やルール変更などに対して臨機応変に対応することができない
- 特定のことに夢中になると他のことを忘れる・手につかなくなる
- 睡眠に関する困りごとがある場合、始業時間に遅刻してしまう
ADHD・ASDの特性がある人が就いている仕事の一例
発達障害のある人が就職する際には、「一般雇用」と「障害者雇用」の両方の選択肢があります。障害者雇用で就職する場合は精神障害者保健福祉手帳を取得していることが必要ですが、それぞれの特性に応じたサポートを受けながら働くことができます。一般雇用では、障害者雇用よりも職業の幅が広い、強みを活かせるケースがある、といった側面もあります。
発達障害のある人が受けられる就労支援にはさまざまな事業所があり、合理的配慮を受けやすい職場などについて専門家に相談しながら、自身に合う就業形態を考えることも可能です。
では、ADHD・ASDの特性がある人は、実際にはどのような仕事をしているのでしょうか。ここでは、それぞれの特性・強みを活かしながら働いている人の一例を紹介します。
もちろん、同じ職種であっても企業により求められる能力や実際の職場環境は異なりますので、求人に応募する際はその点も考慮して検討するとよいでしょう。
<ADHD>仕事の一例
一般的に、自身の好きな分野・興味のある分野の中で、発想力・想像力、集中力、コミュニケーション能力や、行動力・決断力を発揮できる仕事など、特性を活かせる仕事を考慮しながら仕事を選ぶ人が多いようです。
一方で、マルチタスクやミスのない完璧な作業が求められるような仕事では活躍しづらいかもしれません。
実際に活躍されている仕事の一例を以下に挙げます。仕事選びの参考にしてみてください。
営業職、販売職、記者・編集者、研究者、清掃業、介護職
Webデザイナーやイラストレーターなどのクリエイティブな仕事
広告ディレクター、エンジニア、プログラマー、商品やイベントの企画職 など
<ASD>仕事の一例
一般的に、単独で行える仕事、論理的な思考が得意であることや、集中力・こだわりの高さを強みとして正確な作業ができること、ルールやルーティンを重視する特性を活かせる仕事などを考慮して仕事を選ぶ人が多いようです。
実際に活躍されている仕事の一例を以下に挙げます。仕事選びの参考にしてみてください。
倉庫での仕分け、設備点検、部品等の管理や整理などの軽作業
システム開発、アプリ開発、プログラマーなどのIT系業務
データ入力、ライター、翻訳家、校正者、法務・経理・財務担当者、研究者、図書館司書、駅員
など
ここで挙げた仕事以外でも、それぞれの特性や強みに応じて活躍できる仕事があります。各々の特性、強み・弱み、興味関心のある領域と照らし合わせながら考えてみましょう。
ADHD・ASDの特性から起こりやすい困りごと
強みを活かした仕事においても、特性による困りごとが起こる可能性はあります。困りごとが起きている状況をイメージし、事前に対策を考えておくことでスムーズな対応が期待できます。
ADHDのある人に起こりやすい困りごとと対策
- ケアレスミスを何度もしてしまう
対策:細かくメモを取る、スピードよりも確実性を重視する、指示はメールやメモなど形に残るものでもらう、自分以外の人に毎回ダブルチェックを頼む、落ち着いて作業する、など - 忘れ物やなくし物、遅刻が多い
対策:物の置き場所を決める、重要な書類などは自分で保管しない、アラームを何重にもかける、リマインダー機能を活用する、など - 順序だてて仕事をすすめることができない
対策:優先順位を上司に確認する、やること順番リストやスケジュール表を作り目につくところに置く、ひとりで担当せずマネジメントを依頼する、など
ASDのある人に起こりやすい困りごとと対策
- 人とのコミュニケーションがうまくとれない
対策:メールなど文字によるコミュニケーションを依頼する、なるべく人とかかわらずに済む仕事を選ぶ、周囲の人に自分の特性を説明し理解してもらう、など - マニュアルのない作業や臨機応変な対応ができない
対策:具体的な指示や見本・手本を依頼する、焦らず落ち着いて作業する、ひとつずつ作業を終わらせていく、自分なりのマニュアルを作り周囲の人に確認してもらう、など - 感覚が過敏・鈍麻で作業の妨げになる
対策:不快になりやすい素材の衣類などは着用しない、サングラスやイヤーマフ・ノイズキャンセリング機能付きイヤホンなどを使用する、など自分が快適に過ごせる工夫をする
また、「二次障害」により働くことが困難になる場合もあります。
二次障害とは、発達障害の特性による生きづらさや困りごとといった心理的なストレスが元となり、うつ病や不安障害、依存症などの精神疾患や睡眠障害が引き起こされてしまう状態です。精神的なつらさを抱えている人は、これらの病気の治療や発症予防のため、周囲の人や支援機関、医療機関などに相談してみてはいかがでしょうか。
二次障害・睡眠障害・精神疾患について
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自分に合った仕事を探すには
発達障害の有無にかかわらず、自分に合う仕事を探すのは難しいものです。
最近では複数回、転職をする人もめずらしくありません。自分らしい働き方・仕事内容について、一度考えてみませんか。
当サイトでは、発達障害と仕事について、探し方や相談できる機関などについて詳しく紹介したページも用意しています。ぜひ参考にしてみてください。
監修:昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授) 太田晴久先生
本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。