発達障害をどう捉えるか、
基本となる考え方
周囲の方へ発達障害という言葉や概念は広まりつつありますが、周囲の方にとっては、“実感”として分かりづらい・理解しづらいことも多いのではないでしょうか。
ここでは、周囲の方が発達障害を理解するためのヒントや考え方について、事例も合わせて紹介します。
発達障害の特性はグラデーション
発達障害とは、生まれつき持っている脳の性質や働き方、その後の発達の仕方に偏りがあることで起こる言語や行動、情緒などの特性のことで、主に自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害/限局性学習症(LD/SLD)の3つのタイプがあります。
発達障害の特性(発達特性)には、「忘れ物が多い」 「ひとつのことにこだわる」など、誰にでもあてはまるものもありますが、日常生活に支障を及ぼしてしまうなど、いくつかの基準を満たすとき、「発達障害がある」と診断されます。そのため、発達障害の診断には「明確な線引き」をつけにくく、特性が一部認められるものの、診断される程ではない、いわゆる“グレーゾーン”の方も多くいます。
つまり、発達特性は“誰にでも” “グラデーションのように”存在しているのです。
Aさんは忘れっぽいけどなんとかなっているし、特性はあるかもしれないけれど発達障害と診断はされなさそうね。
Bさんは生活や仕事に支障が出ているようなので、他の基準も満たせば発達障害と診断されるか、そうでなければ“グレーゾーン”にあてはまりそうね。
身近な方に「発達障害があるかもしれない」と感じるのはどんなとき?
前述のように、発達特性自体は誰にでも存在していますが、以下のような場合は「発達障害があるかもしれない」と考えられるかもしれません。
「発達障害があるかもしれない」と考えられる一例
毎日のように忘れ物やなくし物をしてしまう。中には財布やスマートフォン、会社の入館証などの大事な持ち物や業務の締切りを忘れることも多く、生活や仕事に支障が出てしまっている。
仕事中に、ひとつの作業にこだわって長時間没頭してしまい、他の業務を終えることができないということが頻繁に起こり、上司や同僚がそれとなく注意しても同様の事例が続いてしまう。
ものごとの優先順位をつけて計画的に取組む、見通しを立てるなど、いわゆる“段取り”がとても苦手で、仕事や生活に支障が出てしまっている。一方で、新しい作業に飛びついたり、アイデアが浮かんでそちらを優先してしまったりすることもある。
相手の表情やその場の“空気”に合わせた会話・行動がとても苦手で、周囲とのコミュニケーションに支障が出たり、本人も周囲も疲弊してしまったりしている。
このような場面では、周囲にいる方が困ってしまったり、どう接したらよいか、どうすれば双方がうまくいくか分からなかったりするかもしれません。一方で、ご本人もどうすればよいか分からず困っているけれど、周囲に話せずひとりで悩んでいる可能性があると同時に、ご本人が周囲を困らせてしまっていることに気づけていない場合もあります。
しかし、発達障害の有無にかかわらず、日々の生活や仕事、コミュニケーションがうまくいかないことは日常的によくあることですよね。
それらの原因として“発達障害による特性”が考えられる場合、困っている人がご本人でも周囲の方でも、解決策を探すために行動することは、双方のプラスになるのではないでしょうか。
大事なことを伝えるのって勇気がいるよね。
一見、困っていないように見えて声をかけなかったけれど、勇気を出して声をかけてみたら当事者の気づきになり、周囲もサポートできるようになり、結果的に職場全体がよくなる、という可能性もあるかもしれないよ。
周囲の方も専門家へ相談できる。
必要に応じて活用を
環境や関係性によっては、発達障害についてご本人に話すことが難しい場合もあるかもしれません。
そんな場合は、以下のような専門機関や担当部署に相談することもできます。
- 発達障害者支援センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 高齢・障害・求職者雇用支援機構
- 職場の上司や人事部など、企業内で相談できる方・部署
など
監修:昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授) 太田晴久先生
本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。