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大人の発達障害を知るADHDとASD 特性の違いや
共通点、併存の可能性

ADHDとASD、どちらも発達障害のひとつですが、その特性や困りごとには異なるものもあれば、共通するものもあります。
具体的な違いや共通点、両方の特性を併せ持つ可能性などについて紹介します。

ADHDとASDの違いは?

発達障害には、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害/限局性学習症(LD/SLD)の大きく3つのタイプがあります。いずれも、生まれつき持っている脳の性質や働き方などにより起こるものです。
このうち、ADHDとASDの特性には以下のような特徴があり、同じ発達障害というカテゴリーにあっても違いがみられます。

ADHD・ASDの特性・困りごとの一例

ADHD
  • 不注意

    • 活動に集中できない
    • 気が散りやすい
    • 物をなくしやすい
    • 順序だてて活動に取り組むことができない
  • 多動性・衝動性

    • じっとしていられない
    • 静かにすることができない
    • 待つことが苦手
    • 衝動的な感情・行動を抑えられない
ASD
  • 社会性・コミュニケーションの難しさ

    • 言葉や視線、表情や身振りなどによるやりとりが苦手
    • 自分の気持ちを伝えること、相手の気持ちを読み取ることが難しい
  • 感覚(刺激)の過敏さ・鈍麻さ

  • 興味・関心の狭さ、偏り

    • 特定のことに強いこだわりを持つ
  • その他

    • 不器用
    • 睡眠の異常、過集中、特定のものについて記憶力が高い

たとえば、一般的にADHDでは集中することが難しいとされる一方で、ASDでは特定のことにこだわり高い集中力を発揮する傾向があるとされています。また、ADHDでは人とのコミュニケーションが得意な人が多い一方で、ASDではコミュニケーションが苦手な人が多いとされています。

ADHDとASDに共通する特性と見極め

上記のように、ADHDとASDには違いがありますが、共通する特性・困りごともあります。たとえば、ミスが多い、特定のものにこだわる、「空気が読めない」と言われたり発言を失礼だと捉えられたりすることがある、などです。
一例として、ミスの多さは、ADHDでは不注意の特性から気が散って集中できないため、ASDでは臨機応変な対応が苦手、自分のこだわりを優先してしまうため、などの原因が挙げられます。「ミスの多さ」という点で見れば、どちらも同じ状況に見えますが、その原因はそれぞれ異なり、どちらの特性によるものなのか見極めが難しい場合もあります。

また、ADHDの特性である不注意は、ASDにおいても刺激が多く処理しきれない状況などでも起こります。ASDの特性である人とのコミュニケーションの困難さは、ADHDでも不注意から適切な受け答えができない、多動性・衝動性から感情的になる、つい話しすぎてしまったりするという状況でも起こります。

同じ困りごとに見えても、ADHDまたはASDのどちらなのかによって対処法が変わることがあります。そのため、「発達障害」と一括りにしてしまわないよう、診断の際には慎重に検討されます。

ADHDとASDは併存することも多い

発達障害はひとつの種類・特性だけが表れる人もいれば、いくつかの種類・特性が重なって表れる人もいます。ADHDとASDの両方の特性を持つ人は珍しくなく、発達障害のある成人(20~70歳)838名のうち、ADHDとASDの併存は26.8%(225例)という報告もあります1)

一般的に、いくつかの特性が重なっている場合、そうでない場合よりも困りごとの度合いが高い傾向にあります。また、ASDだけ、ADHDだけにフォーカスした対処法ではうまくいかないことも多くあります。どの特性が強く表れるか、または困りごとの度合いなどを総合的に判断し、一人ひとりに合った対処を検討・実施することが大切です。

ADHD・ASDについて相談するには

もしADHDやASDの可能性があるかもしれないと考えている場合、セルフチェックでおおよその傾向をつかんでみませんか?
そのほかにも、より詳しくご自身のことを知りたい人や、正確な診断を受けたいという人は医療機関を受診することをおすすめします。

【引用文献】

1)令和元年度厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業 発達障害の原因,疫学に関する情報のデータベース構築のための研究-成人の発達障害に合併する精神及び身体症状・疾患に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192131/201918004A_upload/201918004A0008.pdf

監修:昭和大学 発達障害医療研究所 所長
(准教授) 太田晴久先生

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。