(ASD)とは
自閉スペクトラム症悪意はないのに相手を怒らせるようなことを言ってしまう、こだわりが強くて臨機応変に対応するのが苦手、ひとつの
ことに夢中になると他のことを忘れてしまう――
そうした悩みや困りごとは、ASDの特性が原因で生じて
いるのかもしれません。
孤立感や疎外感など、いわゆる対人関係のしんどさを抱え
がちではないですか?
コミュニケーションの苦手さや、
興味へのこだわりの強さやなどの
特性を持つASD
自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)は、人とのコミュニケーションにおいて、
言葉や視線、表情や身振りなどによるやりとりが苦手だったり、自分の気持ちを伝えることや、相手の気持ちを読み取ることが難しかったりするといった特性があります。また、特定のことに強いこだわりを持っていたり、感覚の過敏さを持ち合わせていたりする場合もあります。
ASDの主な特性例
- 社会性の難しさ
- コミュニケーションの難しさ
- 興味・関心の狭さ、
偏り(イマジネーションの難しさ) - 感覚(刺激)の過敏さ、
または鈍感さ - 不器用さ
- 睡眠の異常、過集中、特定のものについて記憶力が高い
このような特性を「ある・なし」に分けるのではなく、傾向が強い人からほとんどない人まで、“ひとつの特性の連続体(スペクトラム)”としてとらえるのがASDです。
ASDの特性だけがある人もいれば、注意欠如・多動症(ADHD)や、限局性学習症(LD)の特性もあわせ持つ人もいます。
自閉スペクトラム症(ASD)
思春期や青年期においては、人との細やかなコミュニケーションが必要とされたり、学校での学習で多様な能力を求められたりすることが増えてきます。しかし、ASDの特性がある人は、そういったことにうまく対応できないことがあります。
大人になってからは、日常生活だけでなく、職場で仕事が臨機応変にこなせなかったり、時には周囲の人と異なる言動をして「空気が読めない」などと言われてしまったり、悩みやトラブルを抱えがちです。さらに、そうしたトラブルがストレスとなって、不安障害やうつ病など精神的な不調(二次障害)に繋がることもあります。
ASDは問診やスクリーニングなどから診断される
ASDの診断は、DSM-5というアメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル」に記載されている基準などをもとにした問診によってなされます。心理検査やRAADSといったスクリーニングテストを併用することもあります。
DSM-5での診断基準
- 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥がある
- 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上ある(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さなど)
- 発達早期から①と②の症状が存在している
- 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されている
- これらの障害が、知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されない
これらの条件が満たされたとき、ASDと診断されます。
さらに、ASDの場合、知的障害や言語障害の有無、ADHDやLDといった他の特性の併存について確認することも重要といわれています。また、レット症候群、脆弱X症候群、ダウン症候群など遺伝学的疾患の一部としてASDの特性が現れることもあります。
ASDの特性があるかどうか確認するセルフチェックを掲載しています。
気になる人は、まずセルフチェックでASDの可能性について確認してみては?
ASDの特性によって生じる困りごとは、
ソーシャルスキルトレーニングなどで対処できる
ASDの特性による困りごとや生きづらさを軽減する方法として、以下のような対処法があります。
ソーシャルスキルトレーニングなどに
よる対処
社会的コミュニケーションに対する特性・障害に関しては、具体的な行動をロールプレイで学ぶ認知行動療法のひとつである「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」や、個別のカウンセリングなどが行われます。
SSTの技法を発展させた、成人ASDに対するショートケア(デイケア)プログラムを実施している医療機関もあります。プログラムを実施している医療機関については、成人期発達障害支援学会のホームページをご参照ください。
薬による対処
イライラや不機嫌などの易刺激性(いしげきせい)、かんしゃくや多動、こだわりなどに対しては、薬によって軽減できる場合があります。また、二次的に引き起こされる抑うつ状態や不安などに対しても薬物治療を行うことがあります。
ASDで現れる特性によって日常生活に支障が出る場合は、ライフステージに応じてさまざまなサポートを受けることができます。
ひとりで悩まず、相談窓口や医療機関に相談することで、生きづらさを和らげることができるかもしれません。
監修:昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授) 太田晴久先生
本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。