対人関係
が苦手
ASDの特性
こだわりが強い、
悪意はないのに相手を怒らせるようなことを言ってしまう、こだわりが強くて臨機応変に対応するのが苦手、ひとつのことに夢中になると他のことを忘れてしまう、気持ちを伝えたり理解したりするのが苦手――
一口にASDといっても、その特性は多様です。
ASDの特性を詳しく知ることは、悩みや困りごとの原因、対処法を知るきっかけにもなります。
ASDの特性について、一緒に確認していきましょう。
こんな困りごとはありませんか?
- 対人関係が苦手で、人とのコミュニケーションがうまくとれない
- 他の人が意図していることを理解できなくて、空気が読めないと言われたことがある
- 人に言われたことを、表面通りに受け取ってしまう
- 思ったことを素直に伝えたら、相手を怒らせてしまった
- 特定のことにこだわりたくて、他の作業が疎かになってしまう
- 自分で決めたルール通りに物事が進まないとイライラしてしまう
- 突然の予定変更が苦手で、臨機応変に対応できない
- 物事が白か黒かハッキリしないと気が済まない
- 騒がしい場所が苦手で、耳をふさいだり立ち去ったりしたくなる
- 一般的な衣服の素材や内側のタグなど、肌に触れるものを不快に感じることがある
その困りごとは、ASDの特性が関係しているかもしれません
ASD(自閉スペクトラム症)には、人とのコミュニケーションにおいて、言葉や視線、表情や身振りなどによるやりとりや、自分の気持ちを伝えること、相手の気持ちを読み取ること、が苦手・難しいという特性や、特定のことに強いこだわりを持つ、感覚が過敏または鈍麻であるという特性があります。
上に挙げたさまざまな困りごとは、これらの特性と関係している可能性があります。ここで言う「特性」とは、生まれつきの脳の仕組みのことであり、育った環境などで培われる「性格」とは異なります。
感覚過敏・感覚鈍麻とは?
騒がしい場所でとても不快になったり、衣類がチクチクして気になったり、逆に強烈に好きな触感や匂いがあったり、または刺激に対して他の人と同じような反応が起こらない、といったことはありませんか?
これらは感覚過敏または感覚鈍麻という「感覚に対する脳の偏り」により生じる反応です。感覚とは、主に五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)や固定感覚、平衡感覚などを指し、感覚過敏では、刺激に対し感覚が敏感に反応してしまうのに対し、感覚鈍麻では刺激に対し感覚が鈍くあまり反応しません。ASDではしばしばみられる特性で、どの感覚が過敏/鈍麻かは人それぞれです。全く生じない人もいますし、ADHDでも同様の特性を持つ人もいます。
感覚過敏・鈍麻の症状 一例
<視覚>
- 過敏:
-
- ●日光や室内光、PC画面などの光がとても眩しく感じ、気持ち悪くなることがある
- ●視覚的な情報量がとても多く感じる
- ●特定の色や柄が苦手
- 鈍麻:
-
- ●見た目の違いに気づかない
<聴覚>
- 過敏:
-
- ●小さな音でも大きく感じる、または周囲の音が全て同じ音量で聞こえる
- ●特定の音(子どもの泣き声や騒音など)に耐えられない
- 鈍麻:
-
- ●音が聞き取りにくい、呼ばれても気づかないことがある
<触覚>
- 過敏:
-
- ●衣服のタグが気になる、特定の素材が苦手
- ●マスクを着用することができない
- ●人に触れられることが苦手
- 鈍麻:
-
- ●温度の変化に気づきにくい、痛みや熱さを感じにくい
<味覚>
- 過敏:
-
- ●特定または独特の触感が苦手、味を強く感じる
- ●偏食や食べず嫌いをする
- 鈍麻:
-
- ●味の変化を感じにくい
<嗅覚>
- 過敏:
-
- ●匂いを強く感じる、特定の匂いで気持ち悪くなることがある
- ●苦手な匂いを避けるために外出や人に会うことを避ける
- 鈍麻:
-
- ●異臭に気づきにくい
感覚過敏・鈍麻のために人付き合いや仕事などの日常生活に支障がある場合は、衣類や室内の環境を調整したり、サングラスやイヤーマフなどを用いたりするなどの対策方法があります。
大人になってから気づくこともある?
小児期には困りごとの程度が軽かったり、周囲の環境によってカバーできていたりした場合、大人になり仕事や家庭などの環境が複雑になることで、対処しきれず困りごとが表出し、ASDの特性があることに気づくケースもあります。
困りごとがある方は、簡単にASDのセルフチェック
ASDの特性によると思われる困りごとを抱えている方や、その場の状況にうまく対応できない、人とのコミュニケーションがうまくいかずつらいという方は、一度ASDの可能性を検討してみてはいかがでしょうか。
ASDの診断・対処法について
ASDの診断は、専門医のいる医療機関で各種診断基準や心理検査を併用した問診を用いて行われます。ASDと診断された場合、医師や臨床心理士のアドバイスを元にソーシャルスキルトレーニングや薬剤の処方など、さまざまな対処法が行われます。
診断とは、レッテル貼りをするためのものではありません。診断を通して困りごとへの対処法が分かるとともに、自己理解が進みサポートを得られやすくなることもあります。
日々の困りごとやセルフチェックの結果から「もしかしたらASDかもしれない」と思ったら、ひとりで悩まず医療機関を受診してみるのも一案です。
監修:昭和大学 発達障害医療研究所 所長
(准教授) 太田晴久先生
本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。