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大人の発達障害ナビ×
コミック『僕の妻は発達障害』第2回

発達障害が
あっても
その人らしく
生きるために

2023年3月16日発売の週刊新潮にて、『僕の妻は発達障害』と大人の発達障害ナビのコラボ記事第2回が掲載されました。
テレビドラマ化された大人気コミック『僕の妻は発達障害』(新潮社)の著者・ナナトエリさんは、ご自身も発達障害を持ち、夫で同書の著者・亀山聡さんと、日々結婚生活を送られています。
ここでは、週刊新潮に掲載された記事から、ナナトさんと亀山さんの対談を掲載します。また、誌面には掲載しきれなかったロング記事も紹介します。

2022年11月10日発売の週刊新潮にて、『僕の妻は発達障害』と大人の発達障害ナビのコラボ記事が掲載されました。
テレビドラマ化された大人気コミック『僕の妻は発達障害』(新潮社)の著者・ナナトエリさんは、ご自身も発達障害を持ち、夫で同書の著者・亀山聡さんと、日々結婚生活を送られています。
ここでは、週刊新潮に掲載された記事から、発達障害のある妻への夫としての向き合い方について、亀山聡さんのお話を掲載します。また、誌面には掲載しきれなかったロングインタビューもご紹介します。

週刊新潮 『僕の妻は発達障害』と
大人の発達障害ナビのコラボ記事
第2回

コミック『僕の妻は発達障害』
ナナトエリ/亀山 聡

漫画家のアシスタントをする夫の北山悟(30)と、発達障害を持つ妻・知花(32)の物語(フィクション)。いろんな問題があるなか、折り合いをつけながら過ごす姿が描かれている。「僕の大好きな妻!」(東海テレビ・フジテレビ系)のタイトルでテレビドラマ化もされた。最新5巻発売中。電子版でも読むことができる。

亀山聡さん、ナナトエリさん対談

一般の家庭では問題でも私たち夫婦がよければそれでいい

――差し出がましい質問ですが、結婚生活で、衝突などされることはあるのでしょうか。

ナナト:発達障害であることを知らなかった新婚のころは、よく喧嘩をしていました。言葉の捉え方や行動の意味合いの認識がお互い異なり、うまく向き合えなかったのだと思います。例えば、彼は言葉の意味をきちんと捉えて話をするタイプで、私がだいたいの意味合いで使う言葉が許せなかったようです。それを彼がいちいち修正してくるので、イラッとして喧嘩に。だいたいで分かるでしょ、と。ただ、私には学習障害があり、言葉の意味を間違って覚えていることがあるので何とも……。

亀山:彼女が発達障害であることを知ってからは、特性※1の部分は特性として受け入れ、時間をかけて一つひとつの問題を解決しながら前に進んでいくようにしました。どちらも我慢しないで、思ったことを正直にぶつけ合う。最後は折り合いをつけて、落としどころを二人で話し合いながら調整していくといった感じです。ただ、そうは言ってもやはり納得できない、腹落ちしないことが結構あったというのが本心です。

ナナト:二人だけで話していても前に進まなくなることは当然ありますよね。そのような時、私が二人で話し合いへこんでしまったことをふとSNSでつぶやいたことがありました。もちろん彼を責めたり、悪口を言ったりするものではありません。

亀山:公に文字でさらされると、意識は変わるものだということをよく理解しました。客観的に文字で見ることで、僕も悪かったのかもしれないと考え直しました。

ナナト:文字で見たら分かるとか、第三者から言われたら心に響くなどはよくあることだと思います。SNSでつぶやく以外にも、信頼できる友人などに話したことが、巡り巡って相手の耳に届くことがあるので、二人の話し合いがなかなか進まない時は、伝える手段を変えてみることも一つの改善策かもしれません。

亀山:最近はあまり喧嘩をしなくなったのですが、いったん始まるとヒートアップして大喧嘩になることがあります。そういう時、我が家では図解するようにしています。

ナナト:以前から行っている方法なのですが、「元々はあれとこれが課題で、今はこうなっているのが問題だ」など、そもそも論を図解するのです。そうしているうちに二人で笑ってしまい、喧嘩が終わってしまうこともあります。

亀山:図解するとお互いすれ違っている原因が分かるので、相互理解を深める一つの方法だと思っています。

ナナト:このようなことを繰り返しながら、相互間でズレているところを知り、それを解決しながら前に進んでいくようにしています。お互いの取扱説明書をつくっていくような感じかもしれません。一般家庭では問題にされることでも、私たちが気にならなければそれでいいというのが大事で、オリジナルの形を二人でつくり上げていっています。

行きつくところは好みの問題なのかもしれない

――夫婦以外の一般の方たちは、どのような認識が必要なのでしょうか。

ナナト:ニューロダイバーシティ※2という考え方に基づけば、発達障害だから変なのではなく、定型発達者と立場は対等なはずです。ただ、そう思ってくれる方ばかりではないのが現実の社会で、私もこれまでつらい目にあってきました。発達障害とは、能力(特性)のバラつきで、私の場合であれば、人の顔色をみる能力がある一方、言語化する能力が低かったり、集中力が欠如したりしていてそれによって性格が左右されているところがあるのです。各自で異なるそのバラつきの形さえ分かれば、向き合いやすい障害だと思っています。周りの方も特性などに関する正しい知識を持つことができれば、お互いに理解することができ、発達障害の人に悪意などはないことが分かるはずです。

亀山:その通りだと思います。彼女と喧嘩したことを振り返ってみると、発達障害による特性に対して嫌だと思うことが多々ありました。ただ、以前は嫌だと思ったことが、今は何とも思わないことのほうが多いのも事実です。短い期間では難しいかもしれませんが、長期的に見たら、解決していける問題は多いはずです。もしそのような関係性で悩まれている方がいれば、希望を捨てないでほしいと思います。

ナナト:実は最近、行きつくところは結局、お互いの好みの問題なのではないかと思い始めています。

※ 1 誰もが脳の多様性を持っており、この多様性が表出したもの

※ 2 人間には脳の働き方の多様性があり、その違いを互いに尊重しようとする考え方。

監修/村中 直人(臨床心理士) 企画制作/新潮社